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概要

NaigaiNenshi

第3章:雌伏の時代[1964-1982]3一つ解決していった。また、大型浮子の開発も手掛けており、折しも巻き網に進出をもくろんでいた大手網屋との間で共同開発を行った。当時の巻き網用浮子はペースト塩ビ製で、経時で可塑剤の抽出、硬化、ひび割れといった欠点があり、網の寿命より短い期間で取り換えられていた。これに対し、無可塑剤で硬化ひび割れのないEVAは少し比重が重いものの、多くの利点を有していた。試作して数がまとまると実際に大型巻き網船に使用してもらい、耐久性試験のほか、具備すべき性能について網屋、現地の船頭、網の研究所などと検討を重ねた。やがて設計仕様も決まり、いよいよ大型浮子の製造プロジェクトが立ち上がった。先に稼働していた小型浮子のラインに大きなトラブルはなかったが、大型浮子のラインは熱のかかり方や加硫時間の長さ、加硫度の進行度合いによって製品割れが多発した。過酸化物加硫での過加硫による伸び不足が原因で、小型浮子の配合よりも加硫剤の量を細やかに調整して切り抜け、なんとか形になったところでいよいよ量産品の使用が始まった。から、1mm前後の厚さのEVA樹脂製のキャップをロープ穴に熱融着して対応することにした。しかし、「この程度の補強では効果がない。暫定策としてロープ穴強度は1t以上でないと駄目」との指示が出され、本格的なロープ穴補強をしたことがない当社にとって大変難しいテーマとなった。「口元にワイヤーを入れたら」とか、「もっと強度のある樹脂はないのか」「ナイロンでやってみるか」ということで、苦し紛れにPVC浮子用塩ビマスターバッチを使用したところ、見事1tをクリアした。PVCとNBRのブレンドによる粘り強さが功を奏したものと推測される。EVAとPVCの接着は瞬間接着剤で無理やりやってのけ、試作品を提出してPJの承認を得て量試となったが、瞬く間にクレームが続出。西へ東へと謝りの連続であった。ほぼ新品の網が陸揚げされ所々浮子が飛んでなくなり、補強したPVC製補強キャップが無残にもあちこちで外れていた。「外れたキャップが網に引っかかり網が破れる」との漁師からの苦情もあった。そんな苦労を乗り越え、発売から2年後の85(同60)年、エフロート口元同時補強が完成した。たちまち東からも西からもクレームが殺到した。ロープ穴が切れて浮子が飛んでいくという、試作時点では起こらなかったトラブルだった。ロープが浮子に食い込み、徐々に切れていくとの考え4フロート(自動車用)の製造ラインの近代化(1980年~81年)フロートの近代化は1980(昭和55)年頃から着々と進めていった。1次加硫切断、ハンガー打ち込み、2次加硫穴開けとラインの全工程の近代化により、大きな省力化を達成するとともに生産能力も3倍に拡大。採算性改善に大きく寄与した。フロートの技術開発について当社の合成ゴム・合成樹脂を使用した硬質独立気泡発泡体は機械的・物理的・化学的性質に優れており、55(同30)年には従来使用されていた金属Shellの接合品と比べて接合部がなく、異形品・小型軽量海苔・平型浮子化に対応可能な工業用フロートの製造を79