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概要

NaigaiNenshi

学する機会を得た。技術者たちはそこで生産ラインを目にして驚いた。整然と製品が流れていくコンベヤーを中心に女性従業員が分業化された工程をこなしていたのである。神戸の工場では一人一人の腕に頼った伝統的な丸上げ方式がほとんどであった。都市の狭小な敷地に立った中小履物工場と、郊外の安くて広い土地で近代的な大型設備を導入していた大規模工場とでは明らかに差が感じられた。神戸には古い設備に継ぎ足しでラインを造っていた工場が多かったのである。当社でもそれから3年後の58(同33)年、履物「ニューモードR」の生産にコンベヤーラインを導入した。すでにこの頃、履物は当社の主要製品の一つとなり、目覚ましい躍進を遂げていた。ニューモードRは素材、仕様は時代によって変化したが、デザインと名称は一貫して変えず現在まで生産販売をしている超ロングセラーである。いつまでも愛される理由がいくつかある。1バンド(適度に軟らかいソリッドゴム)と底のスポンジが非常に丈夫である2デザインがシンプルである3足にフィットして履きやすい4バンド、中底とも適度に軟らかいソリッドゴムのため足当たりが良い5水洗いができる6劣化しにくい7バンドのつやが良い8色・サイズが豊富である9単価が安いなどである。ニューモードRは非常に成型のしにくい履物であった。サイズを合わせると足にフィットさせるため、バンドのつり込み加工時に接着部にかなりのギャザーを均等に付けなければならなかった。少しでもまこぶとめて付けてしまうと瘤ができてしまったので、成型には特別な工具を使った。また量産を必要とする製品のため、圧着ロールにも工夫を凝らした。一般的な圧着ロールは鉄ロールであったが、鉄ロールの上に10mmのスポンジを6、7枚巻き付け、表面には糊が付着しても取れやすいようにビニールを巻いたものを使用した。スポンジを巻いたことにより、食い込みやすく、ソール部とヒール部の厚み差にも無理なくスムーズな圧着ができた。成型工具と圧着スポンジロールを工夫したからこそ均一の製品を量産することができたと思われる。当時はバンドも中底もゴムだったので、一つ一つ加硫した部品をバリ切りし、接着面はバフのすり残しがないように注意した。特にバンドの穴の部分のハサミ切りは熟練を要した。発売した商品については商標登録を行った。ニューモードRの商標登録(633990)が受理されたのはかなり後になってからで、64(同3 9)年のことである。また、スポンジ草履のブルーダイヤの商標登録(684981)は翌65(同40)年になってからであった。現在、ニューモードRは一般履きではなく、全てが学校の上履きとして全国に定着している。輸出スポンジ草履工業会の設立神戸で製造されたスポンジ草履は神戸港から輸出され、安く、品質が良いことからよく売れた。ところが輸出が急上伸している最中の1958(昭和33)年12月、オーストラリアやアメリカから輸入規制が実施された。大量に輸入されたスポンジ草履の中にきわめて安価で、粗悪な商品が出回っているということであった。日本ゴム工業会履物部会は早急、秩序ある輸出体制を整えなければ、せっかく確立した各地域の市場を早晩失う羽目になるとして、関係蒸気感熱釜仕上げコンベヤー赤外線成形コンベヤー裁断機圧着ロール出入り口感熱蒸気乾燥機圧着ロール[掛け金式コンベヤー2台]バフ機机保温棚56生産開始当時の「ニューモード」。登場から半世紀以上経った現在も、上履き用スリッパとして親しまれているこの当時の履物現場(主現場)のレイアウト(18m×40m)